高齢者は蚊に刺されてもかゆくない? 子どもと大人で“かゆみ”が違う理由
by ウェザーニュース

6月27日には西日本で梅雨明けとなり、7月に入って全国的に厳しい暑さにみまわれています。気温の上昇とともに、姿を見かける機会が増えているのが蚊です。
蚊に刺されたときのかゆみは、イライラや不快感の原因となることが多いです。大人と子どもではかゆみが違ったり、あるいは高齢者ではかゆみがないという話も耳にしますが、本当でしょうか。
虫刺され研究の第一人者で近畿中央病院皮膚科部長、兵庫医科大学特別招聘教授を兼任する夏秋優先生によると、「蚊に刺されてもかゆくならない人は一定数いる」といいます。そのメカニズム、かゆみや症状を悪化させないためのポイントなど教えていただきます。
蚊に刺されるとかゆい理由
そもそも、なぜ蚊に刺されるとかゆくなるのでしょうか。
「蚊は人間の血を吸うときに、皮膚に口吻(こうふん)を突き刺します。このとき、血が固まらないよう『唾液腺物質(だえきせんぶっしつ)』を送り込むのです。
この唾液腺物質が人体にアレルギー反応を起こすことによって皮膚炎が起こり、人がかゆみを感じてしまうのです」(夏秋先生)
アレルギー反応には2通りあり、その違いがかゆみの出方に影響しているといいます。
「すぐに出る即時型反応と、時間がたってから現れる遅延型反応があります。
即時型反応では小さな腫れとかゆみが症状で、1~2時間程度で治まります。遅延型反応は刺された翌日以降に腫れやかゆみが現れ、大きな腫れや水膨れになることもあります。かゆみがぶり返し、治るまでに1〜2週間かかります」(夏秋先生)
年齢によって”かゆみ”が違う?
実は初めて蚊に刺された赤ちゃんは、かゆみが出ないといいます。
「かゆみはアレルギー反応によって起こるものなので、唾液性物質に免疫がない新生児や乳児では起きないからです。
蚊に複数回刺されると免疫ができて遅延型反応が起きるようになり、腫れやかゆみが現れるようになるのです」(夏秋先生)
年齢によって、蚊の“かゆみ”に違いがあるのはそのせいでしょうか。
「年齢というよりも蚊に何度も刺されることで、反応が変わるのです」(夏秋先生)
「図のように、はじめ遅延型反応のみの乳児や幼児が、成長とともに何度も刺され、遅延型反応と即時型反応の両方が起きるようになります。さらに刺されることにより、壮年期にかけては即時型反応だけになり、老年期になると無反応になります。
『年をとると蚊に刺されてもかゆくなくなる』という話は、蚊に何度も刺されてきた高齢者で、かゆくならない人がいるということです」(夏秋先生)
ステージの進み方は唾液腺物質に対する免疫の変化によるもので、必ずしも年齢と合致するとは限らないといいます。
「蚊に刺される頻度や体質による個人差が大きいのです。
熱帯地域で肌を露出して暮らす人々のなかには、小児でも無反応になっている人もいます。蚊に刺される回数が多いため、ステージが進んだということです。
逆に昔と比べ蚊に刺される機会の減ってきている日本では、高齢になってもまだかゆみを感じる人が増えています。
蚊の種類の違いも影響します。1人の人で、ヒトスジシマカとアカイエカではステージが違うこともあります。
たとえば、北海道にはヒトスジシマカが生息していないので、ずっと北海道で生まれ育った人が、大人になって東京に出てヒトスジシマカに刺されたとしたら、皮膚の反応はステージ1からになります」(夏秋先生)
伝染病リスクは変わらない
これから秋までは蚊に刺される機会が多くなります。
「たとえ、かゆみを感じなくなったとしても、蚊に刺されることでデング熱やマラリアなどの伝染病リスクは変わりません。『自分は刺されにくい』と思っている人も、注意は必要です。
蚊は人の体から出る炭酸ガス等を察知して寄ってきて刺します。市販の虫除け剤には、蚊がどこに向かって行けばよいのかわからなくする作用があります。蚊は虫除け剤のニオイを避けるわけではないので、露出している肌に塗り残しがないように塗りましょう」(夏秋先生)
蚊の”かゆみ”から逃れるには
かゆみを抑えるにはどうしたらよいのでしょうか。
「すぐに現れるかゆみは、冷やすことが最も効果的です。保冷剤で冷やすとかゆみがやわらぎます。かきむしったり、爪でバッテンをつけたりすると、皮膚を傷つけばい菌が入りやすくなるのでやめましょう。
時間がたってから赤みやかゆみが現れる遅延型反応は、ステロイドホルモン入りの塗り薬で炎症反応を抑えます。市販薬でもステロイドホルモン入りのものがあります。
ただし、強い腫れや、かきむしって『とびひ』になってしまう場合などは皮膚科専門医を受診しましょう」(夏秋先生)
蚊対策は怠らずに、蚊の活動が活発になる季節も安心して過ごせるようにしましょう。
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